変な家

変な家
変な家
posted with AmaQuick at 2023.09.03
雨穴(著)
5つ星のうち4.3
¥1,260

中古の家の間取り図の相談を受けた主人公が、
図面上の不可解な点について調査していく話。

小説ではあるものの、ほとんどがセリフで構成されている。
調査していく内容も、実際に体を動かして何かをする、というよりは、
いろいろな人からの会話をもとに、何があったのかを推理していくことがメインとなる。

ストーリーにはやや無理があるものの、
ただの一枚の図面から話が広がっていく構成力は面白い。

主人公は傍観者のような立場であり、
特にいなくても問題ない話となっている。
そのため、感情移入などは発生しなく、
小説としては、ある適度割り切って読むことが必要。
ただ、これは、他人のブログを読んでいるような意識になるよう、
筆者も誘導をかけているんだろうと感じる。

ネットで途中まで読めるため、先が気になったら読んでみると良い。

タワマンに住んで後悔してる

タワマンに住んで後悔してる (コミックエッセイ)
グラハム子(著), 窓際三等兵(その他)
5つ星のうち4.1
¥1,089

タワーマンションに住んでいる、3組の家庭事情を描いた漫画。

タイトルに付けられているタワマンは、そこまで関係なく、
「裕福家庭の妻」ということを焦点に当てたエピソードがほとんどである。
そのため、タワマンならではの苦労話を期待していた人にとっては、
期待外れになるだろう。

ママ友のコミュニティや、子供の受験について
必要以上に他の人と比べてしまい、だんだんと疲弊していく様子が描かれている。

グループから外れないようメンツを保たねばならない、ということや
夫や子供をサポートをしなければならない、という強い思いで、
専業主婦のママたちが、歯止めがきかなくなっていくのは怖い。

人の性格が、環境の変化によって悪い方向に変わる様子に関して、
反面教師として、勉強になる作品。

君に届け<全30巻>

クラスに馴染めない、高校生の奥手の女の子が、
クラスメイトの男の子と恋愛をして、成長していく話。

面白い。

勇気を出した分だけ、どんどん自体が好転してくのは見ていて気持ちがいい。

登場人物が、みんな、真っ直ぐな気持ちを持っているがゆえに、
気持ちが伝わらなかったり、些細な勘違いが起きたりもするのは高校生の年頃らしいし、
そういった人間関係の問題を、
他の人に助けも借りながら、気持ちに整理をつけて、
丁寧に解決していく様子が綿密に描かれていくため、読んでいてスッキリする。

嫌な気持ちになるシーンがない、青春漫画を読みたい方はお勧め。

映画を早送りで観る人たち~ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形~ (光文社新書)

映像作品を倍速視聴する文化について、経緯やその理由を考察する本。

面白い。

様々な方へのインタビューが挟まりながら、話が進んでいくのだが、
どの理屈にも、「確かに」と納得できるだけの理由がある。

僕も、YouTubeは倍速視聴をすることも多いが、
経緯を考えずに、いつの間にかそういう風になっていたため、
改めて考えてみると、言語化された理由に一致していることがわかる。

大量に消費財がある中での、SNSが大きな力を持つことになった背景から、
それに応じて作り手も、
倍速視聴や10秒飛ばし、話数飛ばしをされることを前提にした作りで、
それでも楽しめるように、試行錯誤・工夫されていることを
理解することができた。

映像作品のカルチャーに興味がある方は、おすすめ。

まとめ 数学教師もげきはじめの考察

まとめ 数学教師もげきはじめの考察
さわぐちけいすけ(著)
5つ星のうち4.8
¥0

中学数学の教師が、学校で起こる問題を解決していく話。

面白い。

エピソードのほとんどが、中学生徒との関わり合いとなるのだが、
主人公が物事に達観しており、
問題に対して、常に冷静で、生徒への説明に理屈が通っている様子が、
とても読ませる。

いろんな教師が登場するのだが、
教師も完璧な存在ではないが、クラスのことを大事に考えており、
そいったことが、生徒の信頼につながっていることが
読んでいて気持ちがいい。

1巻の無料漫画であり、手軽に読める良作。

夏目友人帳<全13話>

夏目友人帳 1 【通常盤】 [DVD]
神谷浩史(出演), 井上和彦(出演), 大森貴弘(監督)
5つ星のうち4.1
¥5,083

妖怪が見える青年が、出会った妖怪の悩みを解決していく話。
一話完結型の作品となる。

「妖怪からは人間を知得できるが、人間からは妖怪の存在がわからない」
という世界観であり、
その世界観を生かした妖怪の悩みを描く脚本は唸らせる。

妖怪が、人間よりも人間らしい感情を持っており、
純粋な気持ちで、彼らが怒ったり、悲しんだりする様子は、観ていて気持ちがいいし、
そういったところを、主人公が手を差し伸べて解決していくところは、感動する。

ハッピーエンドが約束されている、温かい作品を見た方は、ぜひ。

そして誰もいなくなった(1945年)

そして誰もいなくなった TMW-061 [DVD]
バリー・フィッツジェラルド(出演), ウォルター・ヒューストン(出演), ルネ・クレール(監督)
5つ星のうち3.5
¥550

孤島に集められた男女10人が次々と殺されていく、ミステリー・サスペンス映画。

クローズドサークルの代名詞と呼ばれる作品であり、
アガサクリスティーの推理小説が原作となっている。

面白い。

はじめは登場人物が多く、混乱してしまったが、
テンポよく人が死んでいくため、自然と人間関係を把握できる。
全員が一生懸命であり、皆の足を引っ張るような厄介者も存在しないため、
ストレスなく見ることができた。

死亡フラグも丁寧でわかりやすく、
安心して、何が起こるのか予想を楽しむことができた。
半世紀以上昔の作品であるが、見て良かったと思える作品。

鏡の国のアリス (角川文庫)

鏡の国のアリス (角川文庫)
ルイス・キャロル(著), 河合 祥一郎(著)
5つ星のうち4.3
¥475

「不思議の国のアリス」のアリスの続編。
アリスが、鏡の向こう側の不思議な世界に迷い込む話。
エピソードは前作と関係しておらず、登場人物も重複していない。

相変わらず、個性豊かな登場人物が登場するのだが、
前作よりも、さらにハチャメチャで、摩訶不思議な世界観の印象を受けた。
1つ文章を読み飛ばすと、状況が追えなくなる、頭がおかしくなりそうな作品だった。

アリスを含む登場人物の、行動原理や感情がわからないが、
とんでもない世界観によって、「こういったもの」だと
無理やり納得させられるパワーを持っている。

前作のほうが脚本にまとまりがあったため、
まずは「不思議の国のアリス」を読んで、楽しめたら、こちらも読んでみると良い。

不思議の国のアリス (角川文庫) 

不思議の国のアリス (角川文庫)
ルイス・キャロル(著), 河合 祥一郎(著)
5つ星のうち4.2
¥462

少女が不思議な世界に迷い込み、そこに暮らす生き物たちと交流をする話。

とても面白い。

とにかく世界観が素晴らしく、次に何が起こるのかがわからないワクワクがある。
普段の生活では想像できない、なんでもありの気が狂ったような出来事や登場人物が、
ふんだんにあふれている。
登場人物の全員が気狂いであるのだが、
それが常識となって、どんどん話が前に進んでいくため、
何が当たり前だったのかが、忘れてしまう感覚を持ってしまうのが見事。

物語のスピード感も良く、退屈しないまま次のエピソードが始まっていき、
最後の裁判のエピソードで、これまでの登場人物が集まるのも、盛り上がって良い。

へんてこりんな出来事が起きたことに対する
7歳程度のアリスの、ふるまい方や言動、考え方も年相応で可愛らしい。

想像していたよりも短い話であり、サクサク読むことができた。
空想好きで読んだことのない人は、ぜひ読んでみることをお勧め。

同志少女よ、敵を撃て

同志少女よ、敵を撃て
同志少女よ、敵を撃て
posted with AmaQuick at 2023.08.13
逢坂 冬馬(著)
5つ星のうち4.5
¥1,045

第二次世界大戦のソ連で、村を焼かれた女性が狙撃手として生きる話。

めちゃくちゃ面白い。

文章が読みやすく、それぞれのシーンに迫力があるため、一気に読み切ってしまった。
それぞれのキャラクターたちが動いていることを、頭の中で想像できるようであった。
ハラハラ、ドキドキした。

どんどん時間が進んでいくため、全く退屈しなく、
それぞれの出来事で、主人公がどんなことを思うかということが、丁寧に描かれていく。
女性であること、狙撃兵であること、といったことから、
戦争の理不尽さや悲惨さ、勝者と敗者など、つらい所も描かれ、
だんだんと成長していく姿は、目が離せなくなる。

周りのキャラクターも、とても個性豊かで生き生きとしており、
明るく物語を盛り上げてくれる。

戦争をテーマにした小説を初めて読んだが、とても面白かった。
強くお勧めできる作品。