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映画を早送りで観る人たち~ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形~ (光文社新書)

映像作品を倍速視聴する文化について、経緯やその理由を考察する本。

面白い。

様々な方へのインタビューが挟まりながら、話が進んでいくのだが、
どの理屈にも、「確かに」と納得できるだけの理由がある。

僕も、YouTubeは倍速視聴をすることも多いが、
経緯を考えずに、いつの間にかそういう風になっていたため、
改めて考えてみると、言語化された理由に一致していることがわかる。

大量に消費財がある中での、SNSが大きな力を持つことになった背景から、
それに応じて作り手も、
倍速視聴や10秒飛ばし、話数飛ばしをされることを前提にした作りで、
それでも楽しめるように、試行錯誤・工夫されていることを
理解することができた。

映像作品のカルチャーに興味がある方は、おすすめ。

鏡の国のアリス (角川文庫)

鏡の国のアリス (角川文庫)
ルイス・キャロル(著), 河合 祥一郎(著)
5つ星のうち4.3
¥475

「不思議の国のアリス」のアリスの続編。
アリスが、鏡の向こう側の不思議な世界に迷い込む話。
エピソードは前作と関係しておらず、登場人物も重複していない。

相変わらず、個性豊かな登場人物が登場するのだが、
前作よりも、さらにハチャメチャで、摩訶不思議な世界観の印象を受けた。
1つ文章を読み飛ばすと、状況が追えなくなる、頭がおかしくなりそうな作品だった。

アリスを含む登場人物の、行動原理や感情がわからないが、
とんでもない世界観によって、「こういったもの」だと
無理やり納得させられるパワーを持っている。

前作のほうが脚本にまとまりがあったため、
まずは「不思議の国のアリス」を読んで、楽しめたら、こちらも読んでみると良い。

不思議の国のアリス (角川文庫) 

不思議の国のアリス (角川文庫)
ルイス・キャロル(著), 河合 祥一郎(著)
5つ星のうち4.2
¥462

少女が不思議な世界に迷い込み、そこに暮らす生き物たちと交流をする話。

とても面白い。

とにかく世界観が素晴らしく、次に何が起こるのかがわからないワクワクがある。
普段の生活では想像できない、なんでもありの気が狂ったような出来事や登場人物が、
ふんだんにあふれている。
登場人物の全員が気狂いであるのだが、
それが常識となって、どんどん話が前に進んでいくため、
何が当たり前だったのかが、忘れてしまう感覚を持ってしまうのが見事。

物語のスピード感も良く、退屈しないまま次のエピソードが始まっていき、
最後の裁判のエピソードで、これまでの登場人物が集まるのも、盛り上がって良い。

へんてこりんな出来事が起きたことに対する
7歳程度のアリスの、ふるまい方や言動、考え方も年相応で可愛らしい。

想像していたよりも短い話であり、サクサク読むことができた。
空想好きで読んだことのない人は、ぜひ読んでみることをお勧め。

同志少女よ、敵を撃て

同志少女よ、敵を撃て
同志少女よ、敵を撃て
posted with AmaQuick at 2023.08.13
逢坂 冬馬(著)
5つ星のうち4.5
¥1,045

第二次世界大戦のソ連で、村を焼かれた女性が狙撃手として生きる話。

めちゃくちゃ面白い。

文章が読みやすく、それぞれのシーンに迫力があるため、一気に読み切ってしまった。
それぞれのキャラクターたちが動いていることを、頭の中で想像できるようであった。
ハラハラ、ドキドキした。

どんどん時間が進んでいくため、全く退屈しなく、
それぞれの出来事で、主人公がどんなことを思うかということが、丁寧に描かれていく。
女性であること、狙撃兵であること、といったことから、
戦争の理不尽さや悲惨さ、勝者と敗者など、つらい所も描かれ、
だんだんと成長していく姿は、目が離せなくなる。

周りのキャラクターも、とても個性豊かで生き生きとしており、
明るく物語を盛り上げてくれる。

戦争をテーマにした小説を初めて読んだが、とても面白かった。
強くお勧めできる作品。

パウロ・コエーリョ 賢人の視点

パウロ・コエーリョ 賢人の視点
パウロ・コエーリョ(著), 飯島 英治(翻訳)
5つ星のうち4.3
¥1,485

私が好きな作家である、パウロ・コエーリョが書いたもの。
1分程度で読める短編が、85つ程度まとめられている。

筆者が経験したことや空想したことに対して、どう思ったということが、淡々と描かれているのだが、
わざわざこのような表現にしなくても、伝える手段はあると感じた。
途中、作者の鼻につくような行動に、少し煩わしくなった。

ただ、もちろん、ためになる話も複数あった。
「祈りの言葉」として、迷い、決断、行動、夢見ること、熱意、命があること。
内なる情熱を受け入れること、ひたすら祈りを続けること。
壁を乗り越えることに、愛、死、力、時間の4つが必要であること。
これらは、他の筆者の作品ともつながる話であり、とても納得できた。

興味がある方は、まずは、長編である「アルケミスト」「星の巡礼」を読んでほしい。

なぜか感じがいい人の かわいい言い方

さまざまな会話文を別の言葉に置き換えて、
言葉を柔らかくするメソッド集。

全体的にイマイチ。

ある言葉に対して、別の言い回しを提案していく、ということが書かれていくのだが、
中には、ただ単に初めの言葉が、礼儀知らずな口調だったり、
謙譲語に直しただけのような、まったく学びにならないものもあったりする。

また、「苦手なのでやめておきます」が「得意ではありませんが、やってみたいです」に
置き換えれているなど、そもそも言い換えになっておらず、
意味が180度変わってしまっているものも、数多くある。

それぞれの解説も薄く、都合の良いように解釈をされている文章であり、
不必要に作者の自分語りも挿入されるなどして、
最後には、作者に嫌悪感すら感じてしまう感覚を持ってしまった。

ハリー・ポッターと呪いの子 第一部・第二部: 舞台脚本 愛蔵版

ハリー・ポッターと呪いの子 第一部・第二部: 舞台脚本 愛蔵版
Rowling, J.K.(著), Thorne, Jack(著), Tiffany, John(著)
5つ星のうち4.3
¥1,200

ハリーポッターシリーズの続編。
舞台として公演されたものの脚本。

ハリーポッターシリーズの続きであり、
これまでの登場人物たちが親世代として描かれているのが特徴。
主人公は、ハリーの子供とドラコの子供の二人となる。

舞台脚本ということであり、ほとんど会話文で構成されている。
地の文がほとんどないが、それでも状況がイメージできるのが良い。

それぞれの子供たちの考え方や感性を通じて、
親たちの愛情深さといったものがイメージできる。

特に、ドラコの息子であるスコーピウスの性格がとてもよく、
原作の青年時代のドラコを知っているだけあって、読んでいてとても感慨深くなる。
ただ、ハリーは相変わらず、自己中心的な考え方を持っているため、
その行動に、いちいちイライラしてしまった。

もし機会があれば、舞台も見てみたいと思う作品。

小説 仮面ライダーW ~Zを継ぐ者~

仮面ライダーWのノベライズ作品。
時系列としてはテレビ版の32話と33話の間の話。

依頼人が探偵事務所に来て、捜査を進めていたところ怪事件に遭遇し、
主人公たちが推理をして、真犯人を仮面ライダーとなって倒す、という
おなじみの仮面ライダーWの流れが、そのままの小説となっている。

基本的には主人公が二人組であるが、
今回の作品では、特に片方の人物に色濃く焦点を当てているのが特徴。
普段の頭脳担当のほうが、いろいろと足を動かして、
捜査を進めていくのは、新鮮で面白い。

ただ、テレビ版でもありそうな脚本だったため、
せっかくのノベライズ版であるならば、例えば、小説ならではのトリックなどを入れて、
読者をだますような演出があれば、さらに良かったと感じた。

鬼の御伽 (IIV) 

鬼の御伽 (IIV)
鬼の御伽 (IIV)
posted with AmaQuick at 2023.01.15
板倉 俊之(著), 浅田 弘幸(著)
5つ星のうち4.5 5つ星のうち4.5

お笑い芸人インパルスの板倉が書いた小説。
「桃太郎」「泣いた赤鬼」の童話をベースとした2編の物語を、板倉独自でアレンジしたもの。

面白い。

誰もが知っているおとぎ話を、人間の傲慢さをテーマとして再編しており、
異なる切り口で、ストーリーが進んでいくのが面白い。
起承転結もうまく、ベースはあるものの予想できない展開になっていくため、良い意味で期待を裏切ってくれる。
ただ、「泣いた赤鬼」のほうは、もともとの童話のストーリーがほとんど消えており、
肩透かしなところがあったのは、少々残念だったところ。

ラノベのようにサクサク読める文体であるため、
普段活字を読まない人でも、簡単に読むことができるだろう。
インパルスに興味のある方はぜひ。

大人の語彙力ノート 誰からも「できる!」と思われる


日本語の、さまざまな言葉の言い換えを紹介したもの。

読んで、とてもためになった。

「普段から使う言葉」「ビジネスで使う言葉」など区分分けされており、読みやすい。
特に最後の「季節の言葉」は、読み物としても面白く、
日本語の奥ゆさしさを感じることができた。

同じ意味でも、さまざまな表現方法、いろいろな言い換えがあり、
確かに言われてみればそうだというところを、ハッとしてしまった。

一回読んで、身につけられることはないが、
意識しなければ気付かないところでもあり、
今後、少しずつ身につけていきたい。