投稿者「fsato」のアーカイブ

映画を早送りで観る人たち~ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形~ (光文社新書)

映像作品を倍速視聴する文化について、経緯やその理由を考察する本。

面白い。

様々な方へのインタビューが挟まりながら、話が進んでいくのだが、
どの理屈にも、「確かに」と納得できるだけの理由がある。

僕も、YouTubeは倍速視聴をすることも多いが、
経緯を考えずに、いつの間にかそういう風になっていたため、
改めて考えてみると、言語化された理由に一致していることがわかる。

大量に消費財がある中での、SNSが大きな力を持つことになった背景から、
それに応じて作り手も、
倍速視聴や10秒飛ばし、話数飛ばしをされることを前提にした作りで、
それでも楽しめるように、試行錯誤・工夫されていることを
理解することができた。

映像作品のカルチャーに興味がある方は、おすすめ。

まとめ 数学教師もげきはじめの考察

まとめ 数学教師もげきはじめの考察
さわぐちけいすけ(著)
5つ星のうち4.8
¥0

中学数学の教師が、学校で起こる問題を解決していく話。

面白い。

エピソードのほとんどが、中学生徒との関わり合いとなるのだが、
主人公が物事に達観しており、
問題に対して、常に冷静で、生徒への説明に理屈が通っている様子が、
とても読ませる。

いろんな教師が登場するのだが、
教師も完璧な存在ではないが、クラスのことを大事に考えており、
そいったことが、生徒の信頼につながっていることが
読んでいて気持ちがいい。

1巻の無料漫画であり、手軽に読める良作。

夏目友人帳<全13話>

夏目友人帳 1 【通常盤】 [DVD]
神谷浩史(出演), 井上和彦(出演), 大森貴弘(監督)
5つ星のうち4.1
¥5,083

妖怪が見える青年が、出会った妖怪の悩みを解決していく話。
一話完結型の作品となる。

「妖怪からは人間を知得できるが、人間からは妖怪の存在がわからない」
という世界観であり、
その世界観を生かした妖怪の悩みを描く脚本は唸らせる。

妖怪が、人間よりも人間らしい感情を持っており、
純粋な気持ちで、彼らが怒ったり、悲しんだりする様子は、観ていて気持ちがいいし、
そういったところを、主人公が手を差し伸べて解決していくところは、感動する。

ハッピーエンドが約束されている、温かい作品を見た方は、ぜひ。

そして誰もいなくなった(1945年)

そして誰もいなくなった TMW-061 [DVD]
バリー・フィッツジェラルド(出演), ウォルター・ヒューストン(出演), ルネ・クレール(監督)
5つ星のうち3.5
¥550

孤島に集められた男女10人が次々と殺されていく、ミステリー・サスペンス映画。

クローズドサークルの代名詞と呼ばれる作品であり、
アガサクリスティーの推理小説が原作となっている。

面白い。

はじめは登場人物が多く、混乱してしまったが、
テンポよく人が死んでいくため、自然と人間関係を把握できる。
全員が一生懸命であり、皆の足を引っ張るような厄介者も存在しないため、
ストレスなく見ることができた。

死亡フラグも丁寧でわかりやすく、
安心して、何が起こるのか予想を楽しむことができた。
半世紀以上昔の作品であるが、見て良かったと思える作品。

鏡の国のアリス (角川文庫)

鏡の国のアリス (角川文庫)
ルイス・キャロル(著), 河合 祥一郎(著)
5つ星のうち4.3
¥475

「不思議の国のアリス」のアリスの続編。
アリスが、鏡の向こう側の不思議な世界に迷い込む話。
エピソードは前作と関係しておらず、登場人物も重複していない。

相変わらず、個性豊かな登場人物が登場するのだが、
前作よりも、さらにハチャメチャで、摩訶不思議な世界観の印象を受けた。
1つ文章を読み飛ばすと、状況が追えなくなる、頭がおかしくなりそうな作品だった。

アリスを含む登場人物の、行動原理や感情がわからないが、
とんでもない世界観によって、「こういったもの」だと
無理やり納得させられるパワーを持っている。

前作のほうが脚本にまとまりがあったため、
まずは「不思議の国のアリス」を読んで、楽しめたら、こちらも読んでみると良い。

不思議の国のアリス (角川文庫) 

不思議の国のアリス (角川文庫)
ルイス・キャロル(著), 河合 祥一郎(著)
5つ星のうち4.2
¥462

少女が不思議な世界に迷い込み、そこに暮らす生き物たちと交流をする話。

とても面白い。

とにかく世界観が素晴らしく、次に何が起こるのかがわからないワクワクがある。
普段の生活では想像できない、なんでもありの気が狂ったような出来事や登場人物が、
ふんだんにあふれている。
登場人物の全員が気狂いであるのだが、
それが常識となって、どんどん話が前に進んでいくため、
何が当たり前だったのかが、忘れてしまう感覚を持ってしまうのが見事。

物語のスピード感も良く、退屈しないまま次のエピソードが始まっていき、
最後の裁判のエピソードで、これまでの登場人物が集まるのも、盛り上がって良い。

へんてこりんな出来事が起きたことに対する
7歳程度のアリスの、ふるまい方や言動、考え方も年相応で可愛らしい。

想像していたよりも短い話であり、サクサク読むことができた。
空想好きで読んだことのない人は、ぜひ読んでみることをお勧め。

同志少女よ、敵を撃て

同志少女よ、敵を撃て
同志少女よ、敵を撃て
posted with AmaQuick at 2023.08.13
逢坂 冬馬(著)
5つ星のうち4.5
¥1,045

第二次世界大戦のソ連で、村を焼かれた女性が狙撃手として生きる話。

めちゃくちゃ面白い。

文章が読みやすく、それぞれのシーンに迫力があるため、一気に読み切ってしまった。
それぞれのキャラクターたちが動いていることを、頭の中で想像できるようであった。
ハラハラ、ドキドキした。

どんどん時間が進んでいくため、全く退屈しなく、
それぞれの出来事で、主人公がどんなことを思うかということが、丁寧に描かれていく。
女性であること、狙撃兵であること、といったことから、
戦争の理不尽さや悲惨さ、勝者と敗者など、つらい所も描かれ、
だんだんと成長していく姿は、目が離せなくなる。

周りのキャラクターも、とても個性豊かで生き生きとしており、
明るく物語を盛り上げてくれる。

戦争をテーマにした小説を初めて読んだが、とても面白かった。
強くお勧めできる作品。

パウロ・コエーリョ 賢人の視点

パウロ・コエーリョ 賢人の視点
パウロ・コエーリョ(著), 飯島 英治(翻訳)
5つ星のうち4.3
¥1,485

私が好きな作家である、パウロ・コエーリョが書いたもの。
1分程度で読める短編が、85つ程度まとめられている。

筆者が経験したことや空想したことに対して、どう思ったということが、淡々と描かれているのだが、
わざわざこのような表現にしなくても、伝える手段はあると感じた。
途中、作者の鼻につくような行動に、少し煩わしくなった。

ただ、もちろん、ためになる話も複数あった。
「祈りの言葉」として、迷い、決断、行動、夢見ること、熱意、命があること。
内なる情熱を受け入れること、ひたすら祈りを続けること。
壁を乗り越えることに、愛、死、力、時間の4つが必要であること。
これらは、他の筆者の作品ともつながる話であり、とても納得できた。

興味がある方は、まずは、長編である「アルケミスト」「星の巡礼」を読んでほしい。

美女と野獣(2014年の実写映画版)

美女と野獣 [Blu-ray]
美女と野獣 [Blu-ray]
posted with AmaQuick at 2023.08.13
ヴァンサン・カッセル(出演), レア・セドゥ(出演), アンドレ・デュソリエ(出演), イボンヌ・カッターフェルト(出演), エドゥアルド・ノリエガ(出演), クリストフ・ガンズ(監督)
5つ星のうち4.1
¥563 (中古品)

野獣の大切なバラを盗んだ商人の身代わりとして、
その娘が野獣と一緒に暮らす話。

映像はとても綺麗であるのだが、脚本がイマイチだった。

話のキモとなる、娘が野獣へ恋に落ちていく過程がわからなく、
娘の純粋さを感じることができなかった。
野獣と娘の心を通わせる様子を、もっと丁寧に描くべきだろう。

見終わった後に調べて知ったのだが、
2017年のミュージカルの内容を含めた実写映画版もあるため、
視聴の際には、評判を見ながらどちらをみるのか判断したほうが良い。

きさらぎ駅

きさらぎ駅 [DVD]
きさらぎ駅 [DVD]
posted with AmaQuick at 2023.08.13
恒松祐里(出演), 本田望結(出演), 莉子(出演), 寺坂頼我(出演), 木原瑠生(出演), 永江二朗(監督)
5つ星のうち3.2
¥3,306

有名な都市伝説「きさらぎ駅」を取材していた女性が、
偶然、取材と同じ状況の「きさらぎ駅」に迷い込むホラー映画。

前半と後半で、大きく物語が分かれており、
前半で画面描画していたホラーの物語を、
後半でうまく利用していく、脚本の展開していくのは面白い。
個人的には、後半の脚本では、もっと極端にホラー要素を取り除いてもよかったと感じる。

ホラー映画らしく、いきなり大きな音を出したり、
画面転換で、びっくりさせてきたりすることも多いため、
視聴には注意が必要。

グロテスクなシーンはほとんどないのだが、
時折挿入されるCGがとてもチープであり、特に爆発させる演出は不自然で笑ってしまった。

また、登場人物の演技も上手といえるものではいえなく、
これも作品に集中できない原因になった。

よくありがちな日本製の低予算ホラー映画、という印象をうけた。