劇場版『アイカツ! 10th STORY ~未来へのSTARWAY~』

女の子がトップアイドルを目指すアニメ「アイカツ!」の劇場版。
三年間半続いたテレビアニメ版最終回の後の話で、星宮いちごがアイドル学校卒業をするまでと、そのあとの社会人になってからを描く。

とても面白かった。感動した。

テレビアニメは本来女児向けであり、
「困難があり、それをみんなで力を合わせて乗り越えて少しずつ成長していく」という、
わかりやすいサクセスストーリーであるものの
その挫折や後悔といったものは、大人が見ても十分に見ごたえのある脚本で、面白く興味を持ったところ。

ただ、今回の映画は、可愛い女の子が歌ってダンスするという意味では女児向けではあるものの、
「トップアイドルになった後に、彼女たちは何を考えて、どうなっていくか」という、
アニメ版であったサクセスストーリーとは対極の脚本になっている。
そのため、映画のターゲットが今の女児向けではなく、
10年前にアニメを見ていたような、ある程度の年齢と人生経験を重ねた世代となっている。

シリーズものの利点を最大限に生かしており、さまざまな見せ方を使って、いろいろな人に感謝を伝えていく様子に、
過去の長期間のアニメを知っている視聴者からすると、一つ一つのセリフにとてつもなく重みを感じ、感情移入ができる。
無駄なシーンが一つもなく、本来のアイカツ!シリーズの見せ場であるダンスシーンですら蛇足に感じてほどの、濃厚な脚本であった。

女児向けアニメの女の子たちが、大人の女性へと成長し、お酒を飲みながら語り合う、という舞台設定だけでも、
見ていてとてもワクワクするし、それぞれのキャラクターたちの見えない信頼関係が垣間見える様子に、本当に感動してしまう。

全体を通じてわかりやすい序破急がない脚本であるため、
この作品だけを見た人には映画が退屈に思うかもしれないが、
シリーズ全体のバックボーンを知っている立場からしたら、大変満足のいくデキ。

いつまでも未来は続いていくし、いままで頑張ってこれたため、これからも頑張ろうと思わせる、幸せな作品。
この作品を見るために、これまでのアイカツ!シリーズを見ていたのかと思うほどだった。
本当に良かった。